つくばカピオホールにTORUSが導入
つくばエクスプレスつくば駅のほど近く、科学未来都市として知られる茨城県つくば市の「つくばカピオ」は、文化・スポーツ活動などによる市民の交流の場となっています。
この施設の中でも、カピオホールはダンス・演劇に適した同市のイベントホールです。1996年7月にオープンし、演者と観客が一体感を生み出すようなユニークな384席の客席配置と、高品質な舞台設備により、本格的な劇場空間を生み出しています。
昨年2022年、カピオホールではスピーカーシステムの大規模改修がおこなわれ、Martin Audioの最新機種TORUSを含む製品群が導入されました。会館の技術管理を行う株式会社シグマコミュニケーションズの遠藤氏は改修の課題をこう語ります。
「もともとセンタープロセニアムは露出型で、昇降グリッドに複数のポイントソーススピーカーを使ったクラスターが組まれておりました。機器の更新にあたっては、当然ラインアレイなども検討したのですが、そこには課題がありました。カピオホールは、奥行きはそれほどでもないのですが、馬蹄形のバルコニー席は3階まであって垂直方向のカバレージアングルが大変大きいのです。」
舞台の額縁にかからない高い位置に、本格的なラインアレイを導入しようとすると、垂直指向角を確保するためだけに、多くの本数を用いなければならないことは明確でした。そこでコンスタントカバーチュアアレイが検討されたのです。
Martin Audioの新型機種TORUSは、狙う距離がショートスローにもかかわらず、設置する天井が高いという劇場などにまさにマッチする製品です。15mから30mの奥行の会場の場合、本格的なラインアレイが実用面や価格面においてニーズに合うとは限りません。しかしポイントソースではカバレージやSPLが十分にならないという場合があります。TORUSは最適化されたカバレージ、SPLの実現に、コスト効率性を組み合わせて、そのギャップを完全に埋めるように設計されたコンスタントカーバチャーアレイです。
プロセニアムの昇降グリッドには改修によって、新たにT1215 x2本とT1230 x2本から構成される4本垂直アレイが設置されました。この4本で実に90度の垂直指向角を確保することができ、それは最上段の3階席から1階席最前列までをカバーするのに十分な角度でした。このほかサイドカラムにはXD12がサブウーファーSX118とともに設置され、これらはiK42 DSPパワーアンプで独立駆動されています。インフィルやバルコニー席補助としてBlackline X8も合計6本設置されており、これらはPowersoftのQuattrocanaliシリーズで駆動されました。
音響調整をおこなったオーディオブレインズの太田氏が語ります。
「当初は遠方を狭く、近傍を広く狙うコンセプトでしたが、実際に音を出しながら調整してみたところ、すべて90度の水平指向角で出したほうがより良いカバレージエリアを確保できることがわかりました。これによって会場の80%はプロセニアムでカバーできるようになりました。補助のX8はプロセニアムに合うようディレイと音量を調整し、ごく一部のエリアをフォローするだけとなっています。TORUSのウェーブガイドはグリルをつけた状態でも角度変更が可能ですので、こうした現場でのカットアンドトライにも柔軟に対応できるのはいいところですね。」
遠藤氏はこう締めくくります。「カピオホールは市民の様々な催しに対応する必要があります。最近は学生によるダンスの発表会が盛んで、設備のスピーカーでこれまで以上の音圧を求められることも増えてきました。その点、TORUSとサブウーファーはこれに応えることができる十分なヘッドルームを備えていて、新しい設備には大変満足しています。」
所在地:茨城県つくば市竹園1丁目10-1
事業内容:総合文化施設