4月から始まった「Yamazaki Masayoshi String Quartet “HARVEST”」ツアーは、2015年5月8日（金）に上野の東京文化会館で公演が行われました。この由緒ある六角形の会場は、もともとクラシック音楽向けのホールとして建てられ、特徴的な両壁の雲型の造形物が美しい響きを作り出しています。その響きは、これまで数々の有名な指揮者やオーケストラに愛されてきましたが、電気音響を使用したコンサートでは、この響きと格闘しなければならない場合もあります。

まず、この会場でどのように公演を表現したいのか、音響担当のMSI JAPAN東京の保手氏に伺いました。

「このようなクラシックホールでは残響時間が長くなりがちで、また弦カルテットとアーティストだけのシンプルな編成なので、それぞれの音の細かい部分やダイナミクスを、すべての座席に届けたかったのです」

そのため、ステージの両袖には片側MLA 6本、MLX 1本のグランドスタック、インフィルにはDD6 4本を配置しました。音響調整について、保手氏はこう説明します。

「この会場に合わせて、前の座席の音量が大きすぎないように、リファレンスポジションから前を+2dB、後ろを-2dBに設定しています。通常、ロックコンサートだと前は+4dB、後ろは-3dBに設定することが多いのですが」

はるか遠くの5階席までの客席をカバーするソリューションについて、保手氏はこう説明します。

「どの会場でも基本的には毎朝、測量を行っています。今回もリハーサル中にプログラムを何度か変更しました。サポートスタッフに各階の座席を確認してもらい、そのアドバイスを基に調整しました。さらに、5階手前のバルコニーまで音を届けるために、ソフトウェア上で5階席奥の壁もオーディエンスエリアとして設定したところ、見事に音が届きました」

MLAシステムを採用する利点とは何でしょうか。

「クラシックホールは残響時間が長い会場が多かったのですが、MLAの効果は期待通りに発揮されました。プログラムを入れることによって、客席の音質の均一化や音響効果の最適化が素晴らしいです。FOHの距離に影響されず、どの会場でもミックスが同じようにできます。弦楽器やボーカルの伝達性も望ましく実現できました」

保手氏は満足そうに語ります。

アコースティックなライブでは、アーティストの息遣いまでも届けるような、時にアグレッシブな演出が可能です。会場の広さや本来の残響感を気にさせないほどの臨場感を感じさせる、圧巻のライブとなりました。

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