ロンドンの演劇シーンでCDD-LIVEが大活躍
昨夏にリージェンツパーク野外劇場で行われた新演出版の「ジーザス・クライスト・ スーパースター」でMLAを用いて大成功に導いた、イギリスの音響会社、オートグラ フ社では近年マーチンオーディオ社のCDD-LIVEシリーズの、パワードスピーカーを 様々な舞台作品でポイントソースとして使用しています。音響デザイナーらの言葉と 共にそれぞれの作品をご紹介しましょう。
まず初めにご紹介するのは、サウンドデザイナーのニック・リスター氏です。リー ジェンツパークの「ジーザス〜」では音響デザインの責任者を務めたほか、ジェイソ ン・ロバート・ブラウンが作詞・作曲・脚本を手掛け、映画化も話題になったミュー ジカル「ラスト5イヤーズ」のロンドン公演においてCDD-LIVE15を4台アウトに使用し ました。リスター氏の同僚のアゴストス・シラース氏は同じくロンドンの、ハック ニーエンパイア劇場で行われた「眠れる森の美女」公演の際に客席とフィルを含む プロセニアムスピーカーに同じくCDD-LIVE15を用いて成功裡に導きました。
歴史のある劇場における、新しいスピーカーシステムの提案はけして容易いものではありませんでしたが、CDD-LIVE15をLCRの3か所に、頭上に設置された昇降トラスにはセンターフィルとダウンフィルを併せて設置しました。リスター氏は次のように語っています。
「ジーザスでMLAのサウンドの素晴らしさを経験した後だったので、CDD-LIVEを試すのをとても楽しみにしていました。弊社で所 有している15インチのポイントソーススピーカーはだいぶ年季が入っていてまだ現役ではあるけれど、舞台作品でも使える代わりの存在を求めていましたから。」
社内では、CDD-LIVEシリーズの全ての種類、8、12と15インチを試聴したそうです。続いてシラース氏のコメントです。
「CDD-LIVEの8と12インチはどちらもとてもクリーンで、フラットな反応で水平方向へのカバーレッジが提供されるのが確認できたのですが、15インチの良さは突出していました。そのサウンドはクセがなく、フラットな反応で更には、通常ラージサイズのPAシステムに求められるレベルのサウンドを劇場内 に十分に届けうるパワーがあったのです。劇場内を歩きながらチェックしたのですが、30mも離れたところでハイが十分に届いていることもわかり、他の結果とも併せ て「眠れる森の美女」の作品で試してみようという自信につながりました。」
金箔とベルベットで溢れたハックニーエンパイア劇場は、フランク・マッチャム氏に よって19世紀末に建設され現存する歴史的な建造物の1つで、シラース氏が最初に挑 んだのは、硬質な素材で構成された反射面のために音響的に「ブライトすぎる」特徴 がある点を弱めることでした。そして時には劇場中を満たす子供たちの歓声にも打ち 勝てる明瞭度を確保したかったのです。
「基本的に、バンドは舞台前に設置されたオーケストラピットで演奏するのに対して 客席はその後ろになるため、音響システムは大型にならざるを得ないのです。一方 で、劇場内の反射が強いとカバーレッジとフォーカスを非常に正確にすることで不要 な反射を抑える必要があります。」
この公演でミックスを担当したのはガレス・タッカー氏でDiGiCoのSD10Tを96kHzで使 用、マルチレイヤーの効果音をQLabを使って制御し、それに強力なキーボードバンド に加え、生ドラムセクションが加わりました。彼は次のように語ってくれています。 「私たちは多くのソースをCDDから出しました。特に私が気に入っているこのシステ ムのポイントは、サウンドFXを操作している時にサウンドを徹底的にフラットのまま オペすることができる点です。普段はローエンドを出すのに、サブウーファーに頼り ます。このシステムは、劇場のローの反応をよりコントロールしやすくしてくれま す。サブウーファーがカバーしきれないエリアでは15インチのCDD-LIVEのローに頼れ ばいいのです。」
併せて4台のCSX-LIVE218(CDD-LIVEシリーズの18インチx2のサブウーファー)も設置 されました。2台は客席前方に、残りの2台はトラスです。先ほどのタッカー氏の言葉 を続けましょう。「これらは本当にいい音がするのです。補足すると、多少の処理は しましたし、もともとこの劇場でWSXを過去に何度も使ってきた経験がありましたの で、MARTIN AUDIO社の新しい18インチのダブルサブウーファーならちょうど良いだろ う、と信じていました。」 劇場はグレード2に指定されたイギリス指定建造物でもあり、公演を行うこと自体が 毎回様々なチャレンジを強いられます。
例えばリギングのためのポイントがありませんので、CDD-LIVE8を2階席と3階席のそれぞれの高さに吊ったり立てたりして設置 し、サラウンドの音響を担いました。プロセニアムに設置された6台のCDD-LIVE15は 全てのミックスした音を鳴らすことで、公演全体を盛り上げてくれました。「プロセ ニアムのシステムがとてもよく機能してくれたので、CDD-LIVE12をダウンフィルに、 そしてCDD-LIVE15はセンターフィルとして、2階、3階の客席を狙いました」同じく タッカー氏による説明です。
シラース氏もCDD-LIVE15のアウトのカバーエリアの広さをとても重視しています。 「私は、このような会場で音響システムをデザインする際に何よりも明瞭度を重視し ます、それが全てです。サイドフィルは欠かせません。CDDの水平で100°という指向 性はパーフェクトで、これが110°だと反射やはね返りなど多くの問題が生じてしま います」 結果的に、オートグラフ社のサウンドデザイナーの力説にある通り音響面でも素晴ら しいショーが行われました。「私は本当にCDD-LIVEが大好きで、このスピーカーシス テムを使って何週にもわたる公演ができたことを嬉しく思います。皆さんも、実際に 使ってみることで、一層どんなことができるのかわかるでしょう」 彼の気持ちがリスター氏を動かし、ロンドンのウエストエンドで公演が決まっていた 「ラスト5イヤーズ」の芸術監督が夏のリージェンツパークの「ジーザス〜」公演に 感動していたのを知ると、サウンドデザイナーとしてシステムの説明をし、サウンド システムにMARTIN AUDIO社の製品を採用することを提案し、見事実現したのでした。
とはいえ、これは野外での公演とは全く異なる環境です。リスター氏の言葉です。 「ヴィクトリア朝時代に建設された劇場は150年の間変わっていなく、つまり救貧院 のようなところに10、12あるいは15インチのスピーカーがあるようなものです。」 このミュージカルは、言うなれば「アンプなしの昔のスクールミュージカル劇場」 で、4台のCDD-LIVE15がプロセニアムの開口部のカミシモにペアで吊られロングス ローとフロントフィルの役割を担いました。「ワイドなカバーレッジが非常に求めら れる作品でした。私はCDD-LIVEなら大丈夫だろうとは思っていましたが、実際には予 想以上に美しいサウンドでした。」 EQとディレイをDiGiCoで操作した感想を聞くと、「とてもクリアーで、アナログ、ま るでチョコレートみたいだった。CDD-LIVEはとにかく重要なラウドスピーカーで、そ のサウンドは本当に素晴らしい、最高のプロデュースができ、非常に価値のある Hi-Fiです」と語ってくれました。
最後にもう1つだけ、リスター氏の言葉です「私はCDD-LIVEのパフォーマンスをとて も光栄に思っています。とにかくそのサウンドは美しいです。これはロックショーよ りも、上質な劇場で行われるミュージカルのためのもので、私がここで最初に使いた いと願った何よりの理由です。」