MLAと初登場のXE500で5周年のハイドパークのフェスを祝福
ロンドンのハイドパークで開催される「ブリティッシュ・サマー・タイム(通称BST)」が世界で最も素晴らしいフェスティバルの1つとして定着してゆく中で、世界中で興行を手掛けるAEG社のイベント・ディレクターのジム・キング氏は5年目を迎えるその会場で、マーチンオーディオのレンタルパートナーであるキャピタルサウンド社と更に2年の延長契約を結んだことを発表しました。
この場所は、場外の音圧規制が会場内のサウンドレベルに大きく影響を与えるため、よいPAを実現させるのは難しいと長らく思われていましたが、今やそれは一変しました。それは、キャピタルサウンド社の技術力と、マーチンオーディオのフラッグシップ製品であるMLAとオプティマイゼーションソフトDISPLAYのたゆまぬ進化のコンビネーションによるものと言えるでしょう。
キャピタル社の社長ポール・ティミンス氏の言葉です。「ジムは、サービスの技術面において改良され続けることと、全ての要素が最先端のもので提供されることの両方を期待しています。AEG社はMLAのソフトウェアのアップデートの頻度が高いことから、この現場において最高のツールであり続けるであろうと認識しており、つまり彼らは毎年フェスティバルを改善させながら進めていくことができるのです。また、機材の面では今年は更なる改善がありました。」
結果、同社は今年のフェスティバルにおいて、次のような目覚ましいアップグレードをメインのグレートオークステージで行いました。
1.キャピタルサウンド社は24台に及ぶ最新のXE500フロアモニターを先月のグラストンベリー(レンタルはRG ジョーンズ社)に続いてデビューさせました。このモニタースピーカーは独自のCDD(同軸非対称)技術に加えて、特許申請中の「固定型の第3のウェーブガイド」が特徴の製品です。パーフェクトなサウンドを非常に高いSPLで狙ったカバレージエリアに届けられるように設計されており、アーティストは自在にステージ上を動くことができ、同時に隣接する他のモニターとの被りを減少させることを可能にしました。
マーチンオーディオ社の新しいiK42という、進化した4チャンネルのパワーアンプによって駆動するこのXEシリーズのモニターは、強力なパワーと最高のオーディオ技術を兼ね備えた、最新のDSPとネットワークコントロールと共に機能しており、フェスティバルにおいて、ブロンディー、スターセイラー、キラーズといったビッグネームたちのステージで活躍しました。
「私たちは開発段階でこのモニターを知りました。このモニターは、これまでの同等製品よりも小ぶりで、軽量で何よりも好印象を与える結果となりました。」先ほどのティミンス氏の言葉です。
2.同社は更に従来のフロントフィルに用いていたW8LMミニラインアレイを12台のMLAコンパクトに置き換えました。これにより、全てのMLAファミリーが同じネットワーク上で稼働するシステムとなりました。
3.他にも、彼らはVIPパヴィリオン内にあった既存のW2製品を水平方向に配置した14台のXD12で(あえて80°x50°のホーンの90°の置き換えはせずに)より均一なカバレージが提供できるように変更しました。ティミンス氏の言葉を続けます。「以前の16台のW2は垂直方向に吊られていました。今回のXD12への変更は、より効果的な解決であり、新しいフライング用の金具を用いるなど新しい技術を受け入れるという私たちの方向性をも示すことができました。」
「実のところWS218Xサブウーファーを使った1か所を除いて、今年のフェスティバルで使われた全てのマーチンオーディオのスピーカーは新しい製品ばかりでした。」
メインのグレートオークステージで使われたその他のスピーカーをご紹介しましょう。昨年同様に、16台のMLAと1台のMLDを2アレイずつ両サイドに設置し、サイドハングには、13台のMLAと1台のMLDをカミシモに設置。サブアレイは21台のMLXをブロードサイドカーディオイドにし、更に11台のキャビネットを後ろ向きに設置しました。
メインの10本のディレイタワーは、それぞれ7台のMLAと1台のMLDからなり、更にサポート用に12台のMLXサブウーファーと、ディレイポジション10と11に8台のMLAコンパクトが配置されました。
フェスティバルは4日間とも完売で、55,000人もの聴衆が訪れ、ヘッドライナーはキングスオブレオンでしたが、カバレージについては1つのクレームもありませんでした。彼らは最新アルバム「Walls」の中から「Overで始まり、初期を懐かしむようにSlow Night, So Long を歌い上げました。観客は、人気楽曲のEyes on You」やバンドを象徴する「Mary」では歓声をあげ、最大のヒット曲の1つ、「Sex On Fire」に続き、最新のヒット曲「Waste a Moment」と客席を沸かせました。
前日、リードボーカルのカリブ・フォロウィルが興奮して「僕たちは明日リハをする必要がないから、今夜は飲みに行こう。みんなもそうしないか?」と誘って、本当に皆連れ立ったのですが、というのは彼らは自分たちのステージの前に同じくグレートオークステージで、ピクシーズのステージでゲスト出演をしました。その時の音のクオリティはライブ中を通じてすばらしいものでした。ある人は「私はピクシーズを録音でしかこれまでに聴いたことがないけれど、このサウンドはまさにそれを再現しているようです」とまでコメントしていたほどです。
会場におけるサウンドレベルでは、今年はついに誰からも音量について意見が上がることはありませんでした。「もはや問題はなくなりました」そうティミンス氏は報告しています。「実際のところ、グリーン・デイのサウンドエンジニアは音量レベルを上げたけれども、会場外のスレッショルドは快適に保たれたままでした。また、2週目の土曜日に行われたキラーズのステージは、全てが彼ららしいロックなギグでした」
それ以外の今年の大きな変化は、ベテランのシステムテックのトビー・ドノヴァン氏による、グレートオークステージとバークレイカードステージを会場内に封じ込める、新しいオプティマイゼイション(最適化)です。これらの場所は平日にも多数の利用があるため、場外への音漏れは非常に厳しく規制され、会場外では少しの音さえも許されませんでした観客がいない中で、音を中にとどめて置くのは非常に難しい要求で、ディレイにおいては工夫したプログラミングが必要でありました。ドノヴァン氏はこのような大規模な会場で初めて使用した新しいDISPLAY2.2に追加された低域のコントロール機能を高く評価しました。
前述のティミンス氏はMLAの再設定のしやすさが、今回の2週にわたって週末のみに開催されるというスケジュールにおいても功を奏した点を評価しています。プレゼンテーションが連続した映画祭や、ウィンブルドンのライブ中継。昨年大成功したキャロル・キングの「タペストリー」コンサートツアーなど、本当にどの現場もそれぞれ異なるレイアウトでした。ティミンス、ドノヴァン両氏ともにカバレージとサウンドレベルの結果については満足のいく結果となりました。
会場におけるシグナルトランスミッションは今回も、光ファイバーでリダンダントを持たせたループ状のOptocoreシステムが使われました。
今回の現場を支えたキャピタル社のクルーたちをご紹介しましょう。グレートオークステージの責任者はマーチン・コノリー氏、ポール・ティミンス氏はその他の会場を担当しました。フェスの初年度から携わり、今回ドバイから戻ったアル・ウッズ氏はメインステージのクルーチーフを務めました。FOHテックはクリス・ワイブロー氏、ステージ2のクルーチーフはロバート・イートック氏、そしてFOHテックの役割をデイヴィッド・プリストン氏が担いました。