Martin Audio Japan

ニュースリリース
News Release
2021年9月21日

8本のホルンをステージ上に再現したLE100

2021年7月28日、東京芸術劇場コンサートホールにて、大変興味深い手法でクラッシックコンサートが行われました。ホルン奏者の福川伸陽氏は世界的に活躍する音楽家の一人。NHK交響楽団首席奏者としてオーケストラ界にも貢献する人物です。今回福川氏はリサイタルサロン・コンサートを実施するにあたり、どうしても実現したい演出がありました。それは昨年8月にキングレコードからリリースした、福川氏自身が多重録音によって作成した8本のホルンアンサンブルのアルバムの曲をステージ上で演奏することです。

福川氏とキングレコードは東京芸術劇場の音響責任者である石丸耕一氏に相談をしました。石丸氏のアイデアでは7人分はProToolsで録音素材を1トラックずつ別々のスピーカーでプレイバックし、残りの1パートに生演奏の福川氏が加わるというもので、舞台上に7つのスピーカーが福川氏の周りに配列されるという、「スピーカーを楽器として見立てる」ものでした。しかし、これにはいくつかの課題がありました。まずホルンの音色を正しく再現できるシステムでなければならないこと。さらに自然な響きを持つホルン独特の定位感をうまく再現できるシステムでなければならないこと。石丸氏のチョイスはMartin AudioのLE100でした。

石丸氏はこう説明します。「まず楽器の音源を正確に表現できるという点で同軸スピーカーにこだわりました。もともとCDDドライバーを知っていたのですが、これを搭載したウェッジモニターというのはベストな選択でした。とくにLE100のユニットはちょうどホルンのベルと同じくらいのサイズです。これは正確な再現ができそうだなと確信しました。」

ステージ上には椅子が設けられ、センターに立って演奏する福川氏を囲むように配置されています。そして各LE100はそれぞれが異なる方向を向いて設置されました。

「もともとホルンという楽器はベルが後方を向きます。直接音を聴くのではなく、壁に反射した音を聴く楽器なのです。だからスピーカーも直接客席に向けるのではなく、同じようなアプローチを試みました。これによってホルンの独特な柔らかい響きを再現できるのです。」

再生音源と演奏者のスタートを合わせる工夫もユニークなものでした。指揮者モニターと呼ばれる極めて遅延の少ない映像装置を使用して、福川氏自身が事前に録画した指揮の様子をプレイバックします。もともとの多重録音もこの自分自身の指揮映像をベースに展開していきますから、生演奏の公演でも同じアプローチです。さらに念のためにIEMを使ったクリックも提供されました。

もともと都内でも有名な美しい響きを持つ東京芸術劇場コンサートホール。8重奏はコンサート中の「スター・ウォーズ組曲」、「“ベニスに死す”マーラー交響曲第5番~アダージェット」の2曲が披露され、ホールを美しく響かせました。電気音響ではないクラッシック音楽へテクノロジーを使ったアプローチ。これもひとつのイマーシブ音響の形です。

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