RG JONESがGLASTONBURYの主要な4ステージにMARTIN AUDIOを使用
RG Jones EngineeringとそのMartin Audioシステムが2年ぶりにこの土地に戻ってきました。休演となった昨年を取り戻すように、今年はGlastonbury Festivalの主要な4ステージへの採用となったMartin Audioの製品群。そのプレミアムサウンドシステムMLAがメインステージとなるPyramidステージのほか、West HoltsとBlock9のGenosysステージにもお目見え。さらに本年はMartin AudioのWavefront Precision Longbow (WPL)が全世界のフェスティバルに先駆けデビュー。新しいIICONステージでSimon Honywill氏によってプランされたイマーシブ6.1chサラウンド・サウンドシステムが使用されました。
Pyramidステージは3日間のフェスティバル期間中、刺激的なパフォーマンスの数々がスケジュールされ、金曜日の情熱的なStormzyのステージに始まり、翌土曜日はヒット連発のThe Killersによる圧巻パフォーマンスからの、土曜の夜を締めくくるノスタルジックなThe Cureのステージ。 そして日曜の夕方にはあのレジェンド、カイリーミノーグが帰って来ました。
Pyramidステージに設置されたシステムは、いろいろな意味で印象的です。SPLレベルを最大化しながら、均一なカバレージを150,000人という巨大な観衆にむけて提供しつつ、それでいて会場外への音漏れをもコントロールできるのです。全部で72本のMLAが4本のメインハングを構成し、さらに4本のMLA Compactのアレイが、フライングのインフィルとプロセニアムを構成します。これに加えて内側と外側に全8か所のディレイタワーが設けられ、ここでもMLAやMLA Compactを使用。広大なエリアに対して最適化されたカバレージを提供しました。そしてステージ間口いっぱいに伸びる、強力なMLXを使用したブロードサイド・カーディオイド・サブウーファーアレイが、巨大なシステムの低域をコントロールしつつ増強。
今年はお天気に恵まれたフェスティバルですが、もともとこの会場は風の影響を受けやすい場所で、今年も各所で風向きが違うという状況は変わらずでした。しかしここでもPAシステムが持つ特徴で、何とか封じ込めることができました。
Tom OdellのFOHエンジニア、Davy Ogilvy氏は言います。「すごいと思ったね。音が風で流れると思ったけどパワーがちゃんとそこにあったからね。すごくよかったよ。」
このことはGeorge Ezra のFOHエンジニアMike Timm氏も同じことを言っていました。「風の中でもちゃんと出てきたことに感動した。音もすごく良いし、ローエンドが良いね。」
さらにMiley Cyrus のFOHエンジニア、Paul David Hagar氏からも同様の賛辞が。「風の中でもいい音だった。皆クルーは良い人ばかりでプロだね。このシステムでミックスできて楽しかったよ」
Martin Audioの独特なMLAテクノロジーで、それぞれのアレイはカバーすべき場所をきっちりとコントロールしており、プラン通りのオーディエンスエリアを実現します。
各キャビネットに備わった独立したアコースティックセルが、独立したアンプチャンネルとDSPチャンネルを持ち、MLAでは1キャビネットあたり6つの制御素子を持つことになります。 この制御精度がRG JonesのシステムテックMark Edwards氏に、特にSPLに関しオーディエンスエリア各所に対する設定の自由を与え、インテリジェントなソフトウェアが自動的に結果を算出するのです。プロジェクトマネージャーのBen Milton氏はこうコメントします。「これで200m以上の客席エリアでたった3dBしか落ちないんだ。しかもものすごくフラットな周波数特性で。」
結果は大変良好で、特にヘッドライナーのThe Killersでは抜群でした。The KillersのFOHエンジニアKenny Kaiser氏には賞賛の言葉しかありませんでした。「MLAを使ってこの5年間ずっとツアーしてきたけど、屋外での経験はあまりなかったから少しビビッていたんだ。でもこのシステムはすごくて、全部そこにあるっていうか、個人的にはMLAはまだまだいけると思うよ。」
そのころWest Holtsでは、Lizzo、Janelle Monae、Jorja Smith、Wu Tang Clan、Jeff Goldblumといったアーティストによる同様に素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられていました。音響システムが見直されたおかげで、これらアーティストのパフォーマンスはこれまで以上に、観客に届いたと思われます。今年West Holtsには片側14本のMLAが、そして下手には6本のMLA Compact、上手には8本のMLA Compactがアウトフィルとして設置されました。これでアリーナスペースへと抜ける道のエリアもカバーしようというものです。21本の MLX サブウーファーがカーディオイド設定で、ステージ側への回り込みを抑えつつ、客席側には脛にくるパンチのあるエネルギーを届けていました。2か所に設置された16本のMLA Compactを使ったディレイタワーはステージから95mのところに設けられ、そこからさらに75mのところで、売店を避けるように鋭く落ちるというカバレージに設定されました。Martin AudioのユニークなHard Avoid®機能がここでも活躍しました。 システムテックのJack Bowcher氏が言うように「これは2年前からするとすごい進歩だよ。会場中どこも音質が良くなったしコンテンツも良くなったしね。」
この点はHollie Cook のFOHエンジニアAndrew Lorenzo氏も述べています。「MLAはすごく繊細で、グラフィックなんか全然いじらなかった。RG Jonesがうまくチューニングしてくれていたから、ハイエンドもローエンドも、レゲエで欲しいところが全部整っていた。でも音は痛くないというところが、もう一つ気に入ったところだね。いいね!に一票だね」
Block9に関しては、ここはEDMのステージの集まりなのですが、Genosys stageにはMLA Compactが再び採用され、巨大な高さ70 ftのアート作品とともに、エキゾチックな植物や蒸気管があしらわれ、中央にはDJブースが設置されました。システムテックのSean Hatton氏がセットアップを説明します。片側10本のMLA Compactを6本のDSXサブと一緒にステージサイドに設置しました。 今年の現場の問題の一つは温度がすごく変わったことです。日中は暑くて夜間は寒い。でもスナップショットで簡単にその変化に合わせたものをアップロードすることができて、カバレージパターンを維持することができた。これはすごいことです。」
しかしながら今年のBlock9の目玉はなんといってもIICONステージでした。ステージ装飾デザインに、人類へのテクノロジーの普及を連想させるようなVRヘッドセットをつけた巨大な人間の頭部のオブジェを取り入れたのです。
Block9のプランナーであるGideon Berger氏によって「我々が生きるこのデジタルが真実を超えるという恐ろしい現実を表現した不吉なモニュメント」と評されたIICONは巨大な65ftの人の頭部のディスプレイです。LED大画面が入った巨大な立方体部分を含むこのモニュメントはそれ自身の威圧感も強烈です。そのビジュアルの壮観さは、RG JohnsのフェスティバルコンサルタントサウンドエンジニアSimon Honywill氏が作り出す圧倒的なイマ―シブサラウンドサウンド、そして今回デビューとなるMartin AudioのWPLのオーディオの素晴らしさと非常にマッチしました。WPLはMartin Audioの人気を誇るWavefront Precisionシリーズの新型の大型ラインアレイです。WPLは、段階的な制御精度によりラインアレイを最適化するための可変可能なアプローチを提供します。ユーザーは、必要とする空間のカバレージ、求められる均一性、およびエンクロージャーの数に基づき、制御に必要な専用アンプチャネル数を決定できます。
「このイカした舞台で標準的なLRのPAではなく、サラウンドサウンドでもって少しばかり奇抜なことをやってみたかった」とHonywill氏。「だから我々は10本のWPLを6か所全て内向きに吊り下げてエリアを最適化、15,000人収容可能な空間が最大限イマーシブ体験できるようにしました。23m一直線のSXH218サブアレイをカーディオイド配置でセットすることで、跳ねるようなベースとその制御も可能にしました。毎晩スペシャルプレゼンテーションが行われ、プロジェクションマッピングと6.1サラウンドオーディオがコラボしたステージ演出は非常に効果的でした。DJセットではTrinnov Altitude 32 systemを使用してステレオ出力を6.1ラウンドシステムに効果的にミックス、結果は素晴らしいものでした。」
Gideon Berger氏はこれに加えます。「これは実験的なデザインでしたが、Martin AudioやRG Johns、またSimonやサポートのエンジニア達にはかなり助けられた。彼らと一緒に仕事が出来て嬉しかったよ。」
RG Jones Sound EngineeringのマネージングディレクターJohn Carroll氏は次のようにまとめました。「RG JonesにとってGlastonbury Festivalの中核にまた参加できたことは光栄であり特別なことだ。オープニングからオールナイトダンスミュージックまで、今年は大成功の年となった。我々に何が出来たか、観客やエンジニア、主催者からのフィードバックが楽しみだよ。もちろん計画段階から実際のステージまで様々なサポートをしてくれたMartin Audioにも感謝している。Glastonbury Festival の50周年となる来年も待ちきれない。」
最後にMartin AudioのマネージングディレクターDom Hartterが付け加えます。「Martin Audioが特別なのはGlastonbury Festivalが提供する様々なアーティストや音楽ジャンルの要望すべてに合致するそのシグネチャーサウンドです。音響カバレージの最適化、均一性、そして制御という我々のユニークな技術と合わせることで他のステージや地元住民の邪魔をせず、多くの観客を一体化させることが出来るのです。RG Jonesの誠実でミスのないオペレーションにはいつも頭が下がります。」