JAPAN JAM 2021 厳格な感染対策下で行われたフェスティバルとMLA
千葉市蘇我スポーツ公園(千葉市中央区)を会場に2021年5月2日(日)・3日(月・祝)・4日(火・祝)・5日(水・祝)の4日間で開催されたJAPAN JAM 2021。既にこの会場で3回開催されてきた連休の恒例イベントも、昨年はコロナ禍の影響で中止せざるを得ませんでした。丸2年ぶりの開催となった今回は、厳格な感染対策がとられ、多くの注目が集まる中、実施されました。
前回は毎日3万人以上が参加したこのフェスですが、今年は1日1万人に人数制限。マスク着用必須、アルコール飲料の禁止、ステージ前方の指定エリアは1m四方の枠が設けられその中でライブを楽しむという形態がとられました。
ステージエリアでも感染を避けるための工夫がたくさんなされています。MSI JAPAN東京保手氏はこう振り返ります。
「通常であれば使いまわす可能性のあるマイクも徹底的に別マイク、別回線にしました。その結果として運営上のアナウンス回線はスペア含め5回線になりました。どうしても複数の人が使うマイクに関しては1人使うたびに、紫外線照射デシケータを使用しました(写真5)。コンソールは前のエンジニアが終わったら必ず消毒拭きしていました。またアーティストのボーカルマイク、エンジニアのTalkbackマイクはすべて持ち込みをお願いしていました。」
今回もメインスピーカーはMartin Audio MLAが採用されました。メインステージには片側10本のMLA(内1本はMLDダウンフィル)が設置され、3本スタックの真ん中を反転させたカーディオイドスタックを用いた、サブウーファーが片側3か所に設置されました(片側合計9本)。さらにWPMがフロントフィル/アウトフィルとして片側4か所に使用されました。
システムプランを担当した保手氏はこう語ります。
「東京が緊急事態宣言下、千葉県もまん延防止等重点措置中でしたので、普段以上に騒音苦情には緊張し配慮をしました。事前の音出しチェックの際にCD をFOHで100dBAで再生時、メインのMLAのエリアをステージから60m, 70m, 80mの3段階のパラメーターを用意して、会場外のモニタリングポイントにてどのくらい聴こえるかで判断をしました。これによって3つのステージのMLAエリアを70mのパターンをスタート基準としました。LOTUS STAGEは通りに近い為60mスタートにしました。」
丸1年以上大型フェスが開催できず、待ちわびていた音楽ファンへの想いは開催スタッフも同様です。「フェスの運営側は会場内で、お客様が出来るだけ質のよい音を楽しめるようにすることと、近隣影響との狭間で苦労していました。その時々のお客様や風速などの状況に応じて、音が届く範囲を随時調整する必要がありました。もちろんそのときの近隣のモニタリングも確認していました。瞬時にこういう制御ができるのはMLAならではだと思いました。RefポイントはFOHのままなので、エンジニアには影響が無いかたちにしました。」
今回のフェスティバルの開催を保手氏はこう振り返ります。
「このままですと日本国内でもライブエンタテイメントビジネスが2年間動けず、厚い補償もなく、廃業・離職が増えてきている中、自分達業界の人間のみならず人々の心に音楽の精神的な癒しが必要であると感じています。そのためにも安全なライブエンタテイメント運用を増やしていきたい。今回の開催には国内の賛否もありますが、結果クラスターも出さずに行うことができました。このように徐々に信用を上げて、夏に向けて業界全体の後押しになればと願っています。」